公認会計士試験に独学で合格できる?勉強方法やメリット・デメリットを解説

公認会計士は、会計や監査の専門家ですが、試験は難しく、合格率は約10%です。

受験指導は高額で、自分のペースで勉強できないこともあります。そこで、独学という方法があります。

しかし、独学で公認会計士試験に合格することは可能なのでしょうか。

この記事では、独学のメリット・デメリットや勉強方法、科目別ポイント、モチベーションの高め方などを解説します。これらを参考にすれば、独学での合格が近づくでしょう。

公認会計士試験は独学で合格できる?

まずは公認会計士試験に独学で合格できるかどうかを解説していきます。

合格率から考えると独学での合格は厳しい

公認会計士試験は、合格率が非常に低い難関試験です。独学での合格は可能ですが、厳しいと言わざるを得ません。

公認会計士試験の全体の合格率は10%前後で、短答式は20〜25%程度、論文式は35%〜40%程度の合格率です。

合格率の低さは、短答式試験と論文式試験の両方に合格しなければならないことや、試験範囲が広く専門的なことが要因となっています。

独学での合格は無理ではないが戦略を立てる必要がある

公認会計士試験は、独学での合格は無理ではありませんが、戦略を立てる必要があります。

  • ・試験範囲を把握し、自分に合った教材を選ぶ
  • ・長期的かつ具体的な勉強計画を立て、自分に厳しく守る
  • ・過去問や模擬試験を多く解き、自分の弱点や間違いを分析する
  • ・独学のデメリットを補うために、SNSやオンラインサービスなどを活用する
  • ・モチベーションを保つために、目標設定やご褒美などを工夫する

上記のような綿密な戦略を立てることが求められます。詳しくは後述しますので、ぜひ読み進めてください。

公認会計士試験に独学で挑むメリット・デメリット

次に公認会計士試験に独学で挑むメリットとデメリットをそれぞれ3点ずつご紹介します。

リットとデメリットを確認し、試験勉強に取り組みましょう。

メリット①費用を抑えられる

公認会計士試験に独学で挑む最大のメリットは、費用を抑えられることです。受験予備校などに通うと50万円や100万円など高額な費用がかかります。

しかし、予備校や通信教育を利用せずに独学で対策すれば、テキストや参考書などのみで数千円や数万円程度で済みます。

予備校や通信教育への費用を捻出できない人にとっては、独学で対策するメリットがあるわけです。

メリット②自分のペースで勉強できる

公認会計士試験に独学で挑むもう一つのメリットは、自分のペースで勉強できることです。

公認会計士試験は、試験範囲が広く、専門的な知識が必要なため、勉強する内容や量が多くなります。予備校や通信教育では、決められたカリキュラムやスケジュールに沿って勉強しなければなりません。

しかし、独学であれば、自分のレベルや目標に合わせて、勉強する順番や時間を自由に設定できます。

また、自分の弱点や興味のある分野に重点的に取り組むことも可能です。自分に合った勉強方法を継続したい場合は独学が向いているでしょう。

メリット③学習計画を自由に設定できる

さらに公認会計士試験に独学で挑む場合は、学習計画を自由に設定できます。公認会計士試験は、必須科目と選択科目の合計で9科目あります。

予備校や通信教育では、全科目を一括して勉強するカリキュラムが多いです。

しかし、独学であれば、自分が受験する科目や順番を自由に決めることができます。

また、試験日に合わせて、勉強のペースや重点を調整することもできるでしょう。

自分の受験する科目や順番、試験日などに合わせて、最適な勉強方法を見つけることができる点がメリットです。

デメリット①課題解決に時間がかかる

公認会計士試験に独学で挑む最大のデメリットと言えるのが、課題解決に時間がかかることです。

公認会計士試験は、専門的な知識や応用力が要求されるため、勉強中に分からないことや疑問点が出てくることが多いです。

予備校や通信教育では、講師やスタッフに質問することができますが、独学ではそういうサポートがありません。

そのため、自分で調べたり考えたりしなければならず、時間や労力がかかります。

よって、独学で進める場合は分からないことや疑問点が出てきたときに、自分で調べたり考えたりするスキルが必要です。

デメリット②情報が不足しやすい

次に情報が不足しやすいことです。公認会計士試験は、法令や制度の変更に対応しなければなりません。

予備校や通信教育では、最新の試験情報や変更点を教えてくれますが、独学ではそうはいきません。

そのため、自分で試験情報や変更点を収集する必要があります。

しかし、試験情報や変更点は、公式サイトや公式ガイドブックなどにしか掲載されていないことが多く、見逃したり遅れたりする可能性もあるでしょう。

自分で試験や法令について情報収集する習慣が必要です。

デメリット③モチベーション管理が難しい

公認会計士試験に限らず、独学の場合はモチベーション管理の難しさもデメリットです。

独学であれば、自分のペースで勉強できるというメリットがありますが、反面、自分でモチベーションを維持しなければなりません。

予備校や通信教育では、講師やスタッフからの指導や励ましを受けることができますが、独学の場合は自分で管理しなければならないわけです。

そのため、自分で目標や進捗を管理したり、成功体験を積んだりする必要があります。

公認会計士試験に独学で合格するための勉強方法

公認会計士試験に独学で合格するハードルは高いですが、ここでご紹介する4つの勉強方法を実践すると、合格に近づけます。それぞれの内容を確認していきましょう。

テキストは最低でも3周する

公認会計士試験の勉強では、テキストを最低でも3周しましょう。公認会計士試験は、試験範囲が広く、専門的な知識が必要なため、テキストを一度読んだだけでは内容を理解することができません。

また、論文式試験では、内容の理解だけでなく、応用力も求められます。

そのため、テキストを繰り返し読むことで、内容を定着させるとともに、応用力を養うことができます。

1周目はテキストの内容を大まかに把握することを目的し、2周目はテキストの内容を詳細に理解することを目的に、3周目はテキストの内容を暗記することを目的にすると効果的に知識が身につくでしょう。

目的意識をもって繰り返すことが大事です。

日頃の勉強にアウトプットも入れる

日頃の勉強にアウトプットも入れることも必要です。公認会計士試験は、インプットだけでなく、アウトプットも重要な要素です。

インプットだけでは、知識や情報が頭に入っているだけで、実際に使えるかどうか分かりません。

アウトプットをすることで、知識や情報を定着させるとともに、自分の弱点や間違いを発見することができます。

具体的には下記の方法が考えられます。

  • ・テキストや参考書の内容を自分の言葉でまとめたり、図表化したりする
  • ・過去問や模擬試験を多く解く
  • ・自分で問題を作ったり、他の受験生と問題交換したりする

さまざまな方法でアウトプットし、知識の定着を目指してください。

隙間時間の使い方を工夫する

日々の生活では隙間時間の使い方を工夫してください。個人差はありますが、公認会計士試験の勉強には、約1,500時間の勉強時間が必要です。

しかし、仕事や家庭などの都合で、まとまった時間に勉強できないことも多いでしょう。

そこで、隙間時間を有効に活用することが重要です。具体的には次の方法が挙げられます。

  • ・通勤中にテキストや参考書の音声版を聞く
  • ・休憩中にテキストや参考書の要点を復習する
  • ・寝る前に過去問や模擬試験の解答を見直する

隙間時間の使い方を工夫することで、総合的な勉強時間を増やすことが可能です。

過去問は最低でも5年分こなす

試験の過去問は最低でも5年分はこなしてください。過去問を解くことで、試験問題の傾向や自分の弱点を把握することができます。

また、知識や情報を定着させるとともに、応用力や解答力を養うことも可能です。

しかし、過去問は毎年変わりますし、法令や制度の変更によって古くなることもあります。

そのため、過去問は最低でも受験年度直近の5年分は解く必要があります。5年分あれば、試験問題の傾向や変化を十分に把握することができます。

また、過去問を解くときは下記の点を意識してください。

  • ・本番さながらに制限時間内で解く
  • ・正解だけでなく、不正解や不完全なものもチェックする
  • ・解答は理由や根拠も確認する
  • ・自分の間違いや弱点をメモする

過去問を漫然とこなすのではなく、弱点を把握し復習の材料とすることがポイントです。

独学で公認会計士試験に合格するための科目別ポイント

公認会計士試験は、短答式と論文式に分類されます。それぞれにおいて合格するためのポイントをご紹介します。

短答式編

短答式は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目からなります。公認会計士として必要な基礎的な知識や技能を問われる科目です。

4科目の総点がおおむね7割以上を超えなければ、論文式に挑めません。4科目いずれも論文式の科目になるため、論文式の対策を兼ねています。

簿記、原価計算、会社法、商法など出題頻度の高い分野を中心に対策してください。

論文式編

論文式試験は、会計学、監査論、企業法、租税法の4科目と、経営学、経済学、民法、統計学の中から1科目を選択する選択科目の5科目からなります。

これらの科目は、公認会計士として必要な応用的な知識や技能を問われる科目です。5科目の総点がおおむね52%以上を超えると合格です。

論文式はテキストや参考書を繰り返し読み、過去問や模擬試験を多く解き、自分の考えや判断を理由や根拠とともに記述することが重要です。

場合によっては簿記1級の取得を目指して、理解を深める方法もあります。

独学のモチベーションを高める方法

独学は勉強のモチベーションが学習効果に影響しやすいです。ここでは独学でモチベーションを高める方法をご紹介します。

スケージュール管理と目標設定を徹底する

独学のモチベーションを高めるためには、スケージュール管理と目標設定を徹底することが必要です。具体的な方法を挙げてみます。

  • ・試験日に合わせて、長期的な勉強計画(年間・月間・週間)を立てる
  • ・各科目ごとに、短期的な勉強計画(日々・時間帯)を立てる
  • ・各科目ごとに、具体的かつ達成可能な目標(テキストの読了数・過去問の解答数・得点率など)を設定する
  • ・日々の勉強時間や内容、目標達成度などを記録し、定期的に振り返る

ただし、スケジュール管理や目標設定は人それぞれですので、自分に合う方法を見つけることが大事です。

日々のアウトプットで成功体験を積む

次に日々のアウトプットで成功体験を積むことが必要です。

アウトプットで成功体験を積むことで、モチベーションアップ以外にも以下のようなメリットがあります。

  • ・勉強に対する自信や達成感を持てる
  • ・勉強の成果や効果を実感できる

アウトプットの方法は、先述のとおり、学習内容を自分なりに図表化したり過去問などを多く解いたりすることが挙げられます。

適度な運動や睡眠をとる

勉強へのモチベーションを高めるには、適度な運動や睡眠も有効です。

独学では、長時間の勉強によって、身体的・精神的な疲労が溜まりやすくなります。

そのため、適度な運動や睡眠をとることで、身体的・精神的なリフレッシュをすることができます。

  • ・勉強の合間にストレッチや散歩などの軽い運動をする
  • ・勉強前にジョギングやサイクリングなどの有酸素運動をする
  • ・勉強後にヨガやマッサージなどのリラックス効果の高い運動をする
  • ・毎日7時間以上の睡眠を確保する
  • ・睡眠前にカフェインやアルコールなどの刺激物を控える
  • ・睡眠中に快適な温度や湿度、明るさ、音量などの環境を整える

上記のような行動で適度な運動や睡眠の確保を意識しましょう。

SNSなどで受験生と交流する

SNSなどで受験生と交流することも効果が期待できます。独学では、孤独感や孤立感を感じやすくなります。

そのため、SNSなどで受験生と交流することで、仲間意識や支え合いの感覚を持てるわけです。

  • ・TwitterやFacebookなどのSNSで、公認会計士試験に関するハッシュタグやグループに参加する
  • ・LINEやDiscordなどのチャットアプリで、公認会計士試験に関するコミュニティに参加する
  • ・ZoomやSkypeなどのビデオ通話アプリで、公認会計士試験に関する勉強会やオンライン飲み会に参加する

近年ではオンラインでより多くの人々と繋がれるため、積極的に活用してみましょう。

ご褒美を設定する

自分の頑張りを評価するためにご褒美を設定してみてください。独学は長期的な勉強によって、飽きや倦怠感が生じやすくなります。

そのため、ご褒美を設定することで、勉強の楽しみや動機づけになります。

  • テキストや参考書を1冊読み終えたら、好きな本や漫画を読む
  • 過去問や模擬試験を1回解き終えたら、好きなゲームや動画を楽しむ
  • 各科目の試験が終わったら、好きな食べ物や飲み物を買う
  • 全科目の試験が終わったら、旅行やショッピングをする

上記のように自分が好きなことをご褒美に設定すると、モチベーションを高められるでしょう。

独学の勉強方法を身につけて公認会計士を目指そう

公認会計士試験は独学での合格が厳しいですが、無理ではありません。

独学には費用やペース、計画の自由度というメリットがありますが、課題解決や情報不足、モチベーション管理というデメリットもあります。

そのため、戦略を立てる必要があります。本記事でご紹介した勉強方法を実践して、独学での対策を進めてみてください。

また、スケジュールや目標を設定し、成功体験を積み、運動や睡眠をとり、受験生と交流し、ご褒美をすることでモチベーションを高めることができます。

公認会計士試験は独学で合格できる可能性があります。ぜひ挑戦してみましょう。