公認会計士の難易度はどれくらい?合格しやすい人の特徴と受かるコツを解説
「公認会計士の試験を受けたいけれど、難易度が不安…」とお悩みではありませんか?三大国家資格である医師・弁護士・公認会計士は、試験難易度が非常に高いといわれています。受験前に難易度を把握しておけば、試験に合わせて対策ができるでしょう。
この記事では、公認会計士の難易度について詳しく解説します。高難易度の試験に受かる人の特徴や、合格するためのコツについてもお教えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
公認会計士の難易度は国家3大資格の中では易しい
三大国家資格のひとつである公認会計士は、医師や弁護士に比べて難易度が易しいと言われています。難易度が下がると聞くと安心する方も多いかと思いますが、なぜ難易度が低いのか、医師や弁護士に比べてどれくらい易しいのかが気になるでしょう。
ここでは、公認会計士の受験資格と、医師・弁護士よりも難易度が易しいといわれる理由について解説します。
公認会計士試験は大学や学部を問わず誰でも受験できる
公認会計士試験は受験資格に制限がなく、誰でも受けられます。医師は医大や医学部に、弁護士は法学部に通わなければ受験資格を得られませんが、公認会計士は制限がないため、大学に通わずとも試験に挑戦できます。
学歴だけでなく、年齢と国籍を問わない点も受験しやすいポイントです。公認会計士に必要な知識を身につけていれば、10代の高校生でも取得できます。30~50代でも受験できるため、志したタイミングで受けられるのは大きな魅力だといえます。
また、国籍についての定めもないため、外国人の受験も可能です。簡単に取得できる資格ではないものの、制限がないので誰でも挑戦しやすいでしょう。
公認会計士と医師の難易度の比較
公認会計士と医師は、医師の方が受験資格への制限が多いことから、難易度が高いといえます。2つの受験資格と試験内容についてまとめました。
受験資格 | 試験内容 | |
医師 | ・学校教育法に基づく大学で医学の正規の課程を修めて卒業している
・医師国家試験予備試験合格後、1年以上診療・公衆衛生に関する実地修練を経てる ・外国の医学校を卒業、または外国で医師免許取得しており、厚生労働省が学力と技能を有していると認定している ・沖縄の復帰に伴う厚生省関係法令の適用の特別措置等に関する政令により医師法の規定による医師免許を受けたとみなされ、厚生労働省が認定している |
臨床上に必要な医学・公衆衛生に関して、医師として必要な知識と技能 |
公認会計士 | 受験資格への制限なし | 短答式試験:財務会計論・管理会計論・監査論・企業法
論文式試験:会計学・監査論・租税法・企業法・選択科目(経営学・経済学・民法・統計学のいずれか1科目) |
受験資格の条件は医師の方が多く、試験科目は同等です。医師は医療に必要な知識だけでなく、技能も求められるため、難易度も非常に高いといえます。公認会計士は受験資格への制限がないものの、科目数が非常に多いため、必要な知識をしっかりと身につけておかなければなりません。
公認会計士と弁護士の難易度の比較
弁護士は医師同様、大学卒業後に司法試験を受け、1年間の実務を経る必要があるため、資格取得までに時間がかかります。弁護士と公認会計士の受験資格・試験内容についてまとめました。
受験資格 | 試験内容 | |
弁護士 | ・法科大学院で2・3年の課程を修了している
・司法試験に合格している ・1年間の司法修習を経ている |
短答式試験:憲法・民法・刑法
論文式試験:公法系・民事系・刑事系・選択科目 |
公認会計士 | 受験資格への制限なし | 短答式試験:財務会計論・管理会計論・監査論・企業法
論文式試験:会計学・監査論・租税法・企業法・選択科目(経営学・経済学・民法・統計学のいずれか1科目) |
参考:令和5年司法試験問題
弁護士は法科大学院修了後に司法試験を受ける必要があります。司法試験では公認会計士同様、短答式試験と論文式試験が行われるため、試験までに法律について熟知しておかなければなりません。
司法書士試験合格後に1年の司法修習を経て、終了試験に合格すれば法曹(弁護士・検察官・裁判官)になる資格を取得できます。資格取得までの道のりを考えると、公認会計士の方が難易度は低いといえるでしょう。
ただし「資格難易度ランキング」の中では難しい部類
公認会計士は、医師や弁護士に比べて受験難易度が低いものの、ほかの資格と比較すると高難易度に分類されます。
資格スクールのTACが公開している資格難易度ランキングでは、公認会計士は最も上位に挙げられています。公認会計士と同じくらい難易度が高いものとして、司法書士や税理士などが挙げられているため、簡単に取得できるものではないと考えておきましょう。
最終合格率から見る、公認会計士試験の難易度
公認会計士試験は、年度によって合格率の推移が変わっています。令和元年~4年までの合格率についてまとめました。
願書提出者 | 論文式試験受験者 | 願書提出者の合格割合 | 論文式試験受験者の合格割合 | |
令和元年 | 12,532人 | 3,792人 | 10.7% | 35.3% |
令和2年 | 13,231人 | 3,719人 | 10.1% | 35.9% |
令和3年 | 14,192人 | 3,992人 | 9.6% | 34.1% |
令和4年 | 18,789人 | 4,067人 | 7.7% | 35.8% |
公認会計士の試験は二段階選抜方式で行われています。短答式試験と論文式試験の2つがあり、どちらにも合格した割合は7.7~10.7%です。年度によって1~3%ほど推移しますが、合格率は約10%だと考えておきましょう。
10%という数字は決して高いものではありません。しかし、難易度が高くても毎年合格者が一定数存在するため、資格取得を目指す方は、試験までに知識を身につけておきましょう。
公認会計士の難易度が高い理由は試験科目が多いため
数多くある資格の中で公認会計士が難しいといわれる理由は、試験科目が多いからです。短答式試験は4科目、論文式試験は5科目あるため、学ぶべき範囲がとても広くなっています。資格を取得するにはすべての科目を勉強しておく必要があるため、まずは科目について理解することが大切です。
ここでは、公認会計士の試験科目について詳しく解説します。
短答式試験
短答式試験は、財務会計論・管理会計論・監査論・企業法から出題されます。それぞれの特徴を見てみましょう。
- 財務会計論:簿記・財務諸表論・投資家や債権者などに、企業の経営や財政状況といった意思決定に資する情報を提供することを目的とした会計理論が含まれる
- 管理会計論:棚卸資産評価と製品売上に関する原価計算、利益管理・戦略マネジメント・資金管理・会計情報を利用して行う意思決定・業績管理に関する管理会計が含まれる
- 監査論:公認会計士や監査法人による財務諸表の監査を中心とした理論・制度・実務が含まれる
- 企業法:会社法・商法・金融商品取引法・監査を受けるべき組合・そのほかの組織に関する法が含まれる
短答式試験はマークシートで回答します。科目別に覚えておくべき知識が多くあるため、見落とすことのないよう勉強を進めましょう。
参考:出題範囲の要旨について
論文式試験
論文式試験は会計学・監査論・租税法・企業法・選択科目から出題されます。選択科目は経営学・経済学・民法・統計学 から選べるので、いずれか1つを選び、勉強しましょう。それぞれの特徴についてまとめました。
- 会計学:原価計算論と会計監査論が含まれる
- 監査論:公認会計士や監査法人による財務諸表の監査を中心とした理論・制度・実務が含まれる
- 租税法:租税法総論・法人税法・所得税法などの租税実体法が含まれる
- 企業法:会社法・商法・金融商品取引法・監査を受けるべき組合・そのほかの組織に関する法が含まれる
- 経営学:経営管理と財務管理が含まれる
- 経済学:ミクロ経済学とマクロ経済学が含まれる
- 民法:財産法の分野である民法第1・2・3編と関連する特別法が含まれる
- 統計学:記述統計・確率・推測統計・相関・回帰分析の基礎が含まれる
論文式試験は記述が求められるため、科目についてしっかりと把握する必要があります。選択科目は4つあるため、得意な分野、または興味のある分野を選びましょう。
公認会計士試験に合格しやすい人の特徴
公認会計士の試験に合格しやすい人の特徴として、目標に向かってコツコツ勉強できる・知識をどんどん身につけていけるといったことが挙げられます。
経済学部や商学部などの学生は試験合格率が高いとされています。「経済について学んでいる人は有利なのでは……」と思われるかもしれませんが、法学部や理数系学部といった経済とは関連のない学部の人も合格しているため、必ずしも有利とはいえません。
先述したように、公認会計士の試験科目は非常に多くなっています。覚える知識量も多いため、勉強に集中できる人でないと合格は目指せません。
受験資格に制限がない点は公認会計士の大きなメリットなので、本気で目指したい方は、少しずつでも勉強していきましょう。
難易度の高い公認会計士試験に合格するコツ
難易度の高い公認会計士試験に挑むのであれば、コツを実践しながら勉強を進めていくことがおすすめです。ここで5つのコツをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
①学習計画を立てる
資格取得を決めたら、まずは学習計画を立てましょう。曖昧な計画を立てる、または計画なしで進めると失敗する可能性が高いため、最初に綿密な計画を立てることが大切です。
公認会計士の試験範囲は幅広く、短答式試験4科目・論文式試験5科目の計9科目を学ばなければなりません。短答式・論文式どちらにも含まれる財務会計・管理会計・監査論・企業法から学び始め、4科目が終わり次第、租税法と選択科目の勉強を進めます。
1年で合格を目指す方の計画例を、令和6年度の公認会計士試験の日程に合わせて見てみましょう。
- 2022年12月~2023年8月:財務会計・管理会計・監査論・企業法の習得、8月に第Ⅰ回短答式試験の願書を提出
- 2023年9~11月:4科目全体の復習、苦手科目の克服
- 2023年12月:第Ⅰ回短答式試験
- 2024年1~5月:会計学・監査論・租税法・企業法・選択科目の習得
- 2024年6~7月:5科目全体の復習、苦手科目の克服
- 2024年8月:論文式試験
財務会計・管理会計・監査論・企業法は短答式・論文式どちらにも出題されるため、時間をかけてしっかりと勉強してください。論文式試験は第Ⅰ回短答式試験から8か月後にあるため、租税法や選択科目を急いで身につける必要はありません。短答式試験終了後から始めましょう。
計画を立てても失敗しやすい人の特徴として、予備時間を設けていないことが挙げられます。予想以上に勉強が長引いても、予備時間を設けていれば安心です。予備時間を残りの学習時間にあてられるため、問題なく計画を進められるでしょう。
オンライン授業での大学生の自己調整学習方略使用と学習計画の立て方との関係
②学習時間を確保する
試験合格を目指すには、毎日学習時間を確保することが大切です。時間を確保することによって学習計画を滞りなく進められるため、順調に試験に備えられます。
学習時間の長さは成績にも影響します。李 敏氏が発表した論文によると、優秀な成績を残す学生の多くは3~5時間の自主学習を行っているようです。
ただし、これは大学生のデータです。働いている方は1日3~5時間の学習時間を確保することが難しいため、平日は1時間、休日は2時間以上といった風に工夫しましょう。
参考:学習時間と学習成果との関係一一信州大学「学習時間調査 2015年」の結果に基づいて一一
③学習環境を整える
勉強をする際は、集中できる学習環境を整えることも大切です。
日本建築学会が発表した論文によると、学習意欲を低下させる要因に体調・勉強内容・室内の温度・室内そのものの環境などが挙げられます。体調が良く、興味のある公認会計士の勉強をしようと思っても、空間が整っていなければ勉強に集中できません。
自宅の環境を整えることで毎日意欲的に学習できますが、難しい場合は自習室やコワーキングスペースを活用することも検討してください。空調設備が整っており、騒音のない環境で勉強できるため、集中して取り組めるでしょう。
④反復的に復習する
必要な知識は一度だけでなく、反復的に復習することがおすすめです。一度だけ見た情報は時間の経過とともに薄れていくため、間隔を置いて何度も情報を取り入れましょう。
関西大学が発表した論文によると、間隔を置かずに何度も復習する集中学習よりも、間隔を置いて何度も復習する分散学習の方が長期的に記憶に残ります。試験当日まで知識を覚えておくためにも、間隔を置いて、繰り返し勉強しましょう。
復習間隔を少しずつ広げていくことは長期的な記憶保持を促進するか?
⑤応用問題の対策にも力を入れる
公認会計士試験は出題範囲が幅広く、中には基本知識を基にした応用問題もあるため、事前に対策を練りましょう。応用問題を解くには、基本知識をすべて覚えるだけでなく、内容を理解することが重要です。
知識を得た後は、第三者に概要を説明してみてください。知識の構造をしっかりと理解していれば、本から得たそのままの情報ではなく、自分自身の言葉でわかりやすく伝えられます。
まとめ:工夫次第で難易度が高いと言われる公認会計士試験にも合格できる
三大国家資格のひとつである公認会計士は、資格難易度ランキングの中でも上位に入るほどの高難易度です。合格率もさほど高いとは言えないものの、受験資格に制限がないため、誰でもチャレンジしやすいといえます。
公認会計士試験は短答式・論文式があり、出題範囲が幅広いため、遅くても試験の1年ほど前から勉強を始めましょう。自身の生活リズムに合わせて、無理のない学習計画を立てれば、資格取得に必要な知識を身につけられます。
勉強に集中できる環境を用意できないとお悩みの方は、コワーキングスペースなどを活用しましょう。全国32スタジオを展開する勉強カフェは、手軽に使えるワークスペースをお探しの方におすすめです。勉強に集中できる環境が整っているため、まずはトライアルで利用してみてください。