税理士試験の内容まとめ|勉強のポイントも紹介

税理士は税金の専門家として、企業や個人事業主をサポートする重要な役割を担う仕事です。税理士試験は難易度が高いものの合格することは不可能ではありません。

「税理士試験の内容は?」「税理士試験の合格率はどのくらい?」「試験会場はどこ?」など、税理士試験に関して疑問を持っている方もいるでしょう。

本記事では税理士試験内容の概要について詳しく解説します。

併せて合格を目指すためのポイントをいくつか紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

税理士試験の概要

税理士試験は、税理士として必要な学識および応用能力を持っているか評価するための試験です。

以下では税理士試験の日程・受験地について具体的に紹介します。

試験の日程

税理士試験は1年に1度のみ実施しており、令和5年度は8月に3日間にわたり開催されました。

国税庁の公式サイトによると、試験日程は以下のとおりです。

月日 試験時間 試験科目
8月8日(火) 9時から11時 簿記論
12時30分から14時30分 財務諸表論
15時30分から17時30分 消費税法

又は酒税法

8月9日(水) 9時から11時 法人税法
12時から14時 相続税法
15時から17時 所得税法
8月10日(木) 9時から11時 国税徴収法
12時から14時 固定資産税
15時から17時 住民税又は

事業税

参考:合格発表について|国税庁

また、合格発表は令和5年11月30日(木)となっており、以下の方法にて発表されます。

1.合格科目が5科目に達した人 合格証書を郵送

併せて発表日に受験地・受験番号・氏名を官報に掲載

2.一部の科目に合格または免除決定された人 税理士試験等結果通知書を郵送
3.合格科目のない人 税理士試験等結果通知書を郵送

受験地

令和5年度の税理士試験は、以下の12都道府県で実施されました。

  • 地方 都道府県 試験場 所在地
    北海道地方 北海道 TKP札幌駅カンファレンスセンター 札幌市北区北7条西2-9 

    ベルヴュオフィス札幌 2F/3F

    東北地方 宮城県 サンフェスタ 仙台市若林区卸町2-15-2
    関東地方 埼玉県 獨協大学 草加市学園町1-1
    東京都 大正大学 豊島区西巣鴨3-20-1
    東京流通センター 大田区平和島6-1-1
    武蔵大学

    (江古田キャンパス)

    練馬区豊玉上1-26-1
    立教大学

    (池袋キャンパス)

    豊島区西池袋3-34-1
    中部地方 石川県 石川県地場産業振興センター 金沢市鞍月2-1
    愛知県 愛知大学

    (名古屋キャンパス)

    名古屋市中村区平池町4-60-6
    近畿地方 大阪府 立命館大学

    (大阪いばらきキャンパス)

    茨木市岩倉町2-150
    大和大学 吹田市片山町2-5-1
    中国地方 広島県 広島サンプラザ 広島市西区商工センター3-1-1
    四国地方 香川県 サンメッセ香川 高松市林町2217-1
    九州地方 福岡県 西日本総合展示場 北九州市小倉北区浅野3-8-1
    熊本県 グランメッセ熊本 上益城郡益城町福富1010
    沖縄県 沖縄産業支援センター 那覇市字小禄1831-1

参考:合格発表について|国税庁

なお、税理士試験受験願書を受付後に受験地の変更はできません。ただし受験者数の状況に応じて変更になる場合があります。

税理士試験の内容と出題のポイント

税理士試験は「科目合格制度」を採用しており、以下の中から合計5科目に合格することで、税理士試験合格となります。

必修科目 会計学に属する科目
  • 簿記論
  • 財務諸表論
選択必修科目 税法に属する科目

※いずれか1科目

  • 所得税法
  • 法人税法
選択科目 ※いずれか2科目

※選択必修科目の中から2科目合格している場合は1科目でも可

  • 相続税法
  • 消費税法又は酒税法
  • 国税徴収法
  • 住民税又は事業税
  • 固定資産税

ただし、5科目すべてを1度に合格する必要はなく、毎年1〜2科目ずつ受験しながら数年かけて5科目合格を目指している人が多い傾向です。受験の回数制限も設けられていないため、具体的な学習計画をたてて戦略的に進めていくことが大切でしょう。

ここからは、各科目の出題ポイントを紹介します。

参考:令和5年度(第73回)税理士試験出題のポイント|国税庁

会計学科目①簿記論

簿記論では、企業や個人事業主における取引の記録や計算方法について理解できているかが求められます。令和5年度の税理士試験では、以下の内容に焦点を当てて出題されています。

  • 特殊仕訳帳と精算勘定を用いた仕訳方法
  • ソフトウェアの取得原価と仕訳処理
  • 決算整理前残高試算表から決算整理後の試算表を作成する際の仕訳と計算能力
  • 外貨建取引の換算や外貨建金銭債権債務の期末換算および為替予約の会計処理

会計学科目②財務諸表論

財務諸表論では、会社法および会社計算規則に基づいた財務諸表の作成方法・ルール・考え方などを幅広く学び、十分に理解できているかが求められます。

複数分野にわたる資料を正確に読み取り、貸借対照表及び損益計算書を適切に作成できることがポイントです。

税法科目①所得税法

金融資産の代表例ともいえる上場株式の配当の課税方法について、正しく理解することがポイントです。

税理士の実務においても、個人の金融資産に対してそれぞれの制度の特徴を深く理解した上で保有状況に応じた適切な課税方法を選択することが求められています。

また個人の場合、退職・独立開業・住宅購入・結婚・相続などさまざまな節目があり、ライフステージも異なります。

そのため知人に相談するよりも税理士に助言を求めるケースが多いため、所得金額や所得控除額の計算や税額計算等の基礎的な項目を十分に理解することが求められるでしょう。

税法科目②法人税法

コロナ禍により売上高・利益など経済状況が大きく変化した企業も少なくないでしょう。

法人税法では、業績変動の際に適切な対応ができるように、中小法人に関する以下の項目を正確に理解しているかが求められます。

  • 法人税等・租税公課
  • 受取配当等
  • 役員給与等
  • 減価償却費
  • 交際費等

税法科目③相続税法

相続税額を算出するにあたり、相続税法を総合的に理解する必要があります。

全体像を深く把握するためには相続税法や租税特別措置法だけでなく、以下の項目の知識が不可欠です。

  • 民法の相続人
  • 法定相続人の判定や遺言
  • 分割協議
  • 個別の財産評価
  • 課税価格計算税額計算

さらに被相続人の遺産状況など、個人の背景を理解できているかどうかが判断に大きな影響を与えるため、相続税に関わる法改正も含めて確実に理解する必要があります。

税法科目④消費税法

消費税の課税事業者は、定められた課税期間ごとに確定申告書を提出する必要があります。

法人設立した初年度に消費税課税期間特例選択届出書を提出する場合、その届出書がいつ効力を発揮するか理解しておくことが大切です。

具体的な事例に基づいて、以下の3つの項目を押さえましょう。

  1. 消費税課税期間特例選択届出書の効力
  2. 軽減税率の対象となる「飲食料品の譲渡」の範囲
  3. 消費税が非課税とされる金銭債権を譲渡した場合の課税売上割合の計算

税法科目⑤酒税法

酒類は製造方法や発泡性などの性状の違いによって17品目に分類されており、品目に応じた税率を適用して酒税額を計算しています。

酒税を計算する上で、以下の項目の理解が求められます。

  • 原料・製造方法などを踏まえた酒類の品目判定、および判定に至った理由
  • 品目を判定した酒類に対する課税標準数量
  • 酒類の品目ごとに適用すべき税率と酒税額
  • 酒税額から控除できる戻入控除の適用を受ける数量
  • 最終的に納付すべき酒税額

税法科目⑥国税徴収法

国税徴収法では、国税徴収法第24条に規定される譲渡担保権者の物的納税責任について正しく理解しているかが求められています。

譲渡担保財産から担保権設定者の国税を徴収するための必須項目は以下のとおりです。

  1. 納税者が譲渡した財産のなかに、その譲渡により担保の目的になっているものがあること
  2. 納税者の財産につき、滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められること
  3. その譲渡担保権の設定が、国税の法定納期限等後にされたものであることである。

税法科目⑦住民税

住民税では、個人住民税の軸となる「住所」の意味や認定方法についての理解が求められます。他には個人住民税と所得税の違いを比較しながら、個人住民税の性質を正しく説明できるかがポイントとなります。一例を挙げると以下のとおりです。

個人住民税 所得税
課税 原則翌年度課税 現年課税
仕組み 賦課課税制度 申告納税制度
徴収方法
  • 普通徴収
  • 特別徴収
  • 申告納税
  • 源泉徴収

税法科目⑧事業税

事業税では、資本割額の課税標準の算定について正しく理解しているかが求められています。以下の項目を正しい順序で処理できるかがポイントです。

  1. 無償増資に係る加算
  2. 資本金の額および資本準備金の合算額との比較
  3. 資本金等の月割計算
  4. 控除額の算定(特定子会社の株式等に係る控除、外国事業に係る控除)
  5. 圧縮措置

税法科目⑨固定資産税

固定資産税は納税者の信頼を得るために、納税義務者に対して以下の情報開示制度を行っています。

情報開示制度 目的 閲覧機関
①縦覧制度 ほかの土地や家屋の評価額を比較し、自身の土地や家屋の評価額が適正か判断するため 毎年4月1日から4月20日もしくは年度の最初の納期限のいずれかの遅い日まで
②固定資産課税台帳の閲覧制度

③台帳記載事項の証明制度

固定資産課税台帳に記載されている内容を確認するため 制限なく、いつでも閲覧可能

それぞれの制度の意味合いだけではなく、制度の相違点などについて正しく理解していることがポイントです。

科目別の合格率

令和4年度の税理士試験における科目別の合格率は、以下のとおりです。

合格率(%) 受験者数 合格者数
簿記論 23.0 12,888 2,965
財務諸表論 14.8 10,118 1,502
所得税法 14.1 1,294 182
法人税法 12.3 3,454 425
相続税法 14.2 2,370 336
消費税法 11.4 6,488 740
酒税法 13.2 454 60
国税徴収法 13.8 1,709 235
住民税 17.2 476 82
事業税 14.1 269 38
固定資産税 18.4 910 167
合計(のべ人数) 16.7 40,430 6,732

参考:令和4年度(第72回)税理士試験結果表(科目別)|国税庁

簿記論が23.0と合格率が高くなっており、一方で消費税法は11.4と低い結果となりました。総合的に判断すると税理士試験の合格率は16.7と低い傾向にあるようです。

また、合格率が高い科目と低い科目を抜粋した順位は以下のとおりです。

合格率 高い順位(%) 低い順位(%)
1位 簿記論(23.0) 消費税法(11.4)
2位 固定資産税(18.4) 法人税法(12.3)
3位 住民税(17.2) 酒税法(13.2)

税理士試験を突破するのは難易度が高い?

前述したとおり税理士試験の合格率は低い傾向にあります。

ただし、難易度は高いもののポイントを踏まえて学習計画を立てることで、合格を目指すことができるでしょう。

以下では令和4年度税理士試験の結果を学歴別にまとめたので参考にしてください。

合格率

(%)

受験者数 合格者数
5科目

達成者

一部科目

合格

合格者数

合計

大学卒業 18.6 21,822 493 3,561 4,054
大学在学中 29.8 1,463 436 436
短大・旧専卒業 13.8 660 16 75 91
専門学校卒業 17.9 2,591 59 404 463
高校・旧中卒業 22.1 1,962 44 389 433
その他 42.0 355 8 141 149

参考:令和4年度(第72回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)|国税庁

税理士試験合格を目指すためのポイント

税理士は企業や個人事業主の税金面をサポートする重要な仕事です。

そのため、合格率は低い傾向ですが、ポイントを踏まえて計画的に学習に取り組むことで、合格を目指すことができるでしょう。

ここからは、以下の順に沿って「税理士試験合格を目指すためのポイント」を解説します。

  1. 学習計画を立てる
  2. 計画をもとに勉強時間を確保する
  3. 集中して学習できる環境を整える

税理士試験合格を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

学習計画を立てる

学習計画を立てることで残された時間を再確認しつつ、能動的に学習に取り組むことで税理士試験合格に近付くことができるでしょう。

学習計画を立てる際にやるべきことを明確にするため、どこから学習をはじめたら良いか分からない、試験まで間に合うか、といった曖昧な不安を軽減することもできるでしょう。

自身が何をやるべきか把握したうえで、無理のない範囲で現実的な計画を立てることが大切です。

また前述したとおり、税理士試験は1年目で5科目全てに合格する必要はありません。1年あたり1〜2科目ずつ受験しながら、数年かけて5科目合格を目指している人が多い傾向です。

学習に専念できる人は2〜3年、仕事と両立する方は3〜5年を目標にするのが一般的です。

まずは「5科目合格したい年度」を決めてから、以下の科目別の標準学習時間の目安を参考にしつつ自身が確保できる時間や受験科目に併せて計画を立てましょう。

科目 標準学習時間
所得税法・法人税法 600時間
簿記論・財務諸表論・相続税法 450時間
消費税法 350時間
固定資産税 250時間
住民税・事業税 200時間
酒税法・国税徴収法 150時間

計画をもとに勉強時間を確保する

前述したとおり科目ごとに標準時間が異なりますが、1日あたり2〜3時間ほど学習することで1週間あたり約15時間になり、1年で1科目受験が可能です。日中あまり時間が取りにくい社会人に向いています。

週の学習時間 受験の目安
10時間から15時間ほど 1年に1科目受験が可能
15時間から20時間ほど 1年に2科目受験が可能

(1科目はボリューム少な目の科目)

20時間から25時間ほど 1年に2科目受験が可能

以下は、長期的な学習計画の一例です。

週の学習時間 10時間から

15時間ほど

15時間から

20時間ほど

20時間から

25時間ほど

向いている人 社会人 社会人・学生 学生
1年目 簿記論 簿記論・消費税法 簿記論・財務諸表論
2年目 財務諸表論 財務諸表論・国税徴収法 法人税法
3年目 法人税法 所得税法 消費税法・事業税
4年目 相続税法
5年目 消費税法

11科目の中でも学習時間が最も必要な「所得税法」「法人税法」は、1年1科目の受験がおすすめです。また簿記論と財務諸表論は関連性が高いため、同時学習により学習時間の短縮が期待できます。

学習計画をもとに日々のスケジュールを決めて時間を確保しましょう。

早起きして朝に学習したり、移動時間を有効活用して復習したりして、学習習慣を身につけることも効果的です。

集中して学習できる環境を整える

研究の分析結果によると、学習意欲を低下させる主な要因は「体調」や「学習内容への興味度」であり、次に「温熱環境」「空間環境」など室内環境の質が挙げられました。

自宅や学校の室内環境が不安定と感じる人は、自習室やコワーキングスペースを利用するのもひとつの手です。また、集中して学習できる環境が整った「勉強カフェ」もおすすめです。

環境を整えることで、集中して学習に取り組み学習意欲を高めて効率よく学ぶことが期待できます。

これらは学習意欲を高める直接的な要因にはなりませんが、学習意欲を低下させないために役立つでしょう。

参考:室内環境質が学習意欲ならびに学習効率に与える影響

まとめ:学習の成果を出したいなら「勉強カフェ」へ

税理士試験の合格率は低いものの、効率的に学習することで合格を目指せます。合格を勝ち取るためには、長期的な学習時間と場所の確保が必要です。

しかし、学習に集中できる環境が整っていない方も少なくないでしょう。そのような方には「勉強カフェ」がおすすめです。

勉強カフェは自主学習の場でありながら、カフェの機能も持ち合わせた会員制のラーニングスペースです。異なる文脈を持つ人同士が集まり、切磋琢磨しながら学び合うため学習の成果に繋がることが期待できます。無料見学会やトライアル利用も実施していますので、お気軽にお立ち寄りください。