中小企業診断士の年収は?キャリアパスや年収を上げる方法まで

中小企業診断士は経営コンサルティングに関係する国家資格です。資格取得を目指す人は、年収も気になるところでしょう。

そこで、今回は中小企業診断士の年収を中心に、キャリアパスや年収を上げる方法などを解説します。

中小企業診断士の年収が気になる人や、これから資格取得を目指す場合はぜひ参考にしてください。

中小企業診断士とは

中小企業診断士とは、中小企業の経営に関する専門的な知識と技術を持ち、経営課題の解決や事業計画の策定などのコンサルティング業務を行う国家資格者です。

主に民間からの有償の依頼も受けて活動しています。

中小企業診断士の役割

中小企業診断士にはさまざまな役割があります。

その一例をご紹介します。中小企業診断士の役割は、主に以下のとおりです。

経営診断 中小企業の経営状況や課題を分析し、改善策や提言を行います。例えば、財務分析や市場分析、競合分析などを行い、収益性や競争力を高めるための戦略や施策を提案します。
事業計画策定 中小企業の将来像や目標を明確にし、実現するための具体的な計画や予算を作成します。例えば、新規事業や海外進出などのビジネスプランや事業計画書を作成し、資金調達やリスク管理なども支援します。
経営指導 中小企業の経営者や従業員に対して、経営管理や技術開発などの指導や教育を行います。例えば、会計やマーケティング、人事や組織などの分野でノウハウやスキルを伝授し、能力向上やモチベーション向上に貢献します。
経営情報提供 中小企業にとって有益な経営情報やノウハウを提供します。例えば、最新の経済動向や政策動向、補助金や助成金などの情報を提供し、経営判断に役立てます。
経営協力 中小企業同士や他の専門家と連携し、経営上の問題解決や事業展開に協力します。例えば、中小企業同士で協同組合や共同事業などを結成し、資源やネットワークを共有します。また、税理士や弁護士などの他の専門家と協力し、法務や税務などの分野で支援します。

上表のように中小企業診断士は、企業の経営面に関して幅広くサポートする人物です。

資格取得後のキャリアパス

中小企業診断士の資格取得後には、以下のようなキャリアパスがあります。

  • ・企業内診断士
  • ・独立診断士

まずは、企業内診断士として、自身が勤める会社やグループ会社などで、経営戦略や事業開発などに関わるポジションに就くことが挙げられます。

この場合のメリットは、安定した収入や福利厚生、キャリアアップの機会などがあることです。

デメリットは、上司や組織の方針に従わなければならないことや、自分の意見が通りにくいことなどがあることです。

また、独立診断士として活動することも可能です。

事務所を開設し、民間からの有償依頼を受けてコンサルティング業務を行います。独立診断士のメリットは、自分の好きな仕事を選べることや、高額な報酬を得られる可能性があることです。

デメリットは、営業や経営に関する責任やリスクが大きいことや、収入が不安定になるケースがあることです。

中小企業診断士の年収はいくら

ここからは中小企業診断士の年収について、さまざまな角度から解説していきます。

データから見る中小企業診断士の年収

厚生労働省が展開する職業情報提供サイト「jobtag」によると、中小企業診断士の年収は780.9万円であることが分かりました。

年齢別にみると、50〜54歳の年収が最も高く1086万円となっています。それを境にして、徐々に年収が下がっていきます。

しかし、20代でも年収600万円以上稼げるデータもあり、多業種に比べると全体的に年収が高い傾向です。

参考:jobtag「中小企業診断士」

働き方による年収の違い

先述の「jobtag」 によると、中小企業診断士の就業形態は「自営、振っリーランス」が最も割合が高く66%です。

次いで「正規の職員、従業員」となっており、29.8%になります。

参考:jobtag「中小企業診断士」

独立診断士やフリーランスの中小企業診断士の年収はその人の頑張りによるものであり、収入にも差があります。平均的にみると年収500万〜800万円と言われています。

一方で従業員として働く場合は、月収40.7万円がボリュームゾーンとなっており、年収で言えば480万円程度になるでしょう。ただし、年齢や就業事務所の規模などによって大きく変わります。

他の資格と平均年収を比較

中小企業診断士と他の有名資格の年収を一覧にしてみました。

資格 年収
中小企業診断士 780.9万円
弁護士 971.4万円
司法書士 971.4万円
社会保険労務士 780.9万円
公認会計士 746.6万円

参考:jobtag「中小企業診断士」

参考:jobtag「弁護士」

参考:jobtag「司法書士」

参考:jobtag「社会保険労務士」

参考:jobtag「公認会計士」

上表のとおり、弁護士や司法書士は中小企業診断士よりも年収が高い傾向です。社会保険労務士、公認会計士は中小企業と同水準と言えるでしょう。

中小企業診断士が年収を上げるためには

中小企業診断士として年収を上げる方法はさまざまです。ここからは6つのポイントをご紹介します。 

転職する

中小企業診断士が年収を上げるための一つの方法は、転職です。転職する場合は、自身のスキルや経験を活かせる会社やポジションを探すことが重要です。

例えば、中小企業診断士の資格を持つ人材を求めるコンサルティングファームや金融機関などに転職することで、年収をアップできる可能性があります。

また、自分の専門分野や得意分野に関連する業界や職種に転職することで、より高い評価や報酬を得られることもあります。  

副業として始める

中小企業診断士が年収を上げるためのもう一つの方法は、副業です。

副業として始める場合は、自分の得意分野や興味のある分野に関する依頼を探すことが効果的です。

例えば、WEBサイトやSNSなどで自分のプロフィールや実績を紹介し、クラウドソーシングサイトやマッチングサイトなどで案件を探すことで、副収入を得られる可能性があります。

また、自分の知識やスキルを活かしてセミナーや講演会などを開催すれば、収入源が増えていくでしょう。

独立する

中小企業診断士が年収を上げるためのもう一つの方法は、独立です。

独立する場合は、自ら事務所を開設し、民間からの有償依頼を受けることになりますが、そのためには営業力や人脈が必要です。

例えば、既存の顧客からの紹介やリピート依頼を増やすことや、セミナーやブログなどで自分の知名度や信頼度を高めることが有効です。

また、特定の専門分野やニーズに特化したサービスを提供することで、高い評価や報酬を得られる可能性があります。

民間案件を多く受注できるようになる

中小企業診断士が年収を上げるために、民間案件を多く受注できるようになりましょう。

民間案件を多く受注するためには、自分の強みや特色を明確にし、実績や信頼を積み重ねることが大切です。

例えば、経営戦略やマーケティング、人事や組織などの分野で専門性や独自性を持つことや、中小企業のニーズに応えられるサービスやソリューションを提供することが重要です。

また、他の専門家との連携やネットワークを広げることで、より多くの案件を受注できる可能性があります。 

常に新たな知識を吸収する

常に新たな知識を吸収することも大事です。新たな知識を吸収することで、時代に合わせたサービスを提供できるようになります。

例えば、デジタル化やグローバル化などの経営環境の変化に対応できるスキルやツールを学ぶことや、最新の経済動向や政策動向などの情報を常にアップデートすることが有効です。

また、他の専門家との連携やネットワークを広げることで、より多くのビジネスチャンスを掴むことも可能です。

新たな知識を吸収するためには、以下のような方法があります。

  • ・書籍や雑誌、WEBサイトなどで最新の経営情報や専門知識を読む。
  • ・セミナーや研修会などで他の中小企業診断士や専門家から学ぶ。
  • ・資格試験や検定試験などで自分の知識やスキルを評価する。
  • ・オンラインコースやMOOCなどで自分の興味のある分野や必要な分野を学ぶ。
  • ・メンターやコーチなどから個別にアドバイスやフィードバックを受ける。

さまざまな手法で情報をキャッチして、業務に活かしてください。

中小企業診断士の資格についてよくある質問

中小企業診断士については年収や資格についてよくある質問があります。主な質問をピックアップしましたので、確認してみてください。

そもそも中小企業診断士の収入源は?

中小企業診断士の収入源は診断業務や経営指導、講演、教育訓練、原稿執筆などが挙げられます。

そのなかでも、診断業務や講演、教育訓練の報酬の割合が高くなっています。ときには、調査や研究業務もこなす場合があり、重要な収入源になります。

企業内診断士の年収は?独立診断士と異なる?

企業内診断士の年収は、独立診断士と比較すると安定していますが、上限が低い傾向です。

企業内診断士は約700万円から900万円程度、独立診断士は約500万円から1500万円程度の年収が目安です。

ただし、いずれの場合も能力やスキルなどで年収が大幅に変わるため、常に自己研鑽する必要があります。

中小企業診断士が受け取れる1件当たりの平均報酬は?

中小企業診断士は、依頼内容によって報酬が異なります。経営診断や経営指導の場合は、1日(5時間)で10万円程度が報酬の相場です。

研究や調査、講演講師は、1日(5時間)で5万円が相場になります。

ただし、報酬形態は定額報酬や時間当たりの報酬、成果報酬などが挙げられ、それぞれにメリットやデメリットがあります。

クライアントと相談し、お互いが納得できる報酬形態や報酬額にしてください。

米国公認会計士や税理士などダブルライセンスの費用対効果は高い?

ダブルライセンスを取得し専門性を高めることで年収アップにつながることがありますが、その分、資格取得にかかる費用や時間も多くなります。

活躍の場が広がるのは、年収アップのチャンスも増えるわけですが、さまざまな業務をこなせるか管理面が重要です。

将来的な事業展開をどう考えるかでダブルライセンスが有効かどうかも異なります。

また、米国公認会計士や税理士の試験に合格するためには、予備校に通うなど費用もかかり、将来的に回収できるか、見極めることが大事です。

中小企業診断士は営業力が必要なのか?

中小企業診断士が営業力を必要とするかどうかは、その働き方によって異なります。

独立診断士の場合は、営業力が必要だと言えます。独立診断士は、自ら事務所を開設し、民間からの有償依頼を受けることになりますが、そのためには自分のサービスや商品を顧客にアピールする必要があります。

また、競合他社との差別化や価格交渉なども営業力が求められます。

独立診断士は、営業活動に多くの時間や労力を割くことになるため、営業力が高いほど収入にも影響します。

一方、企業内診断士や公的機関への出向の場合は、営業力はそこまで必要ありません。

企業内診断士は、自身が勤める会社やグループ会社などで、経営戦略や事業開発などに関わるポジションに就きます。この場合は、自分のサービスや商品を売り込む必要はありません。

また、公的機関への出向は、中小企業庁や地方自治体などの公的機関に出向し、無償で中小企業の経営支援を行う場合もあります。

この場合も、自分のサービスや商品を売り込む必要はありません。むしろ、中小企業からの依頼を受けることが前提です。

中小企業診断士は儲からないって本当?

中小企業診断士は儲からないというイメージを持つ方もいますが、一概にそうとは言い切れません。

中小企業診断士は、その専門性や働き方によって年収に大きな差が生じる職業です。独立してコンサルティング業務を行う場合や、特定の専門分野で高い評価を受けている場合は、年収が高くなる傾向があります。

逆に、公的機関への出向や一般的な分野での活動の場合は、年収が低くなる傾向があります。また、中小企業診断士は税理士、公認会計士などよりも平均年収が低いことが多いです。

これは、中小企業診断士の需要や市場規模が他の資格よりも小さいことや、中小企業診断士の報酬水準が他の資格よりも低いことなどが要因でしょう。

したがって、中小企業診断士は儲からないというのは一概には言えませんが、他の資格と比較すると収入面で劣る部分は否めません。

中小企業診断士で稼ぐには、前述したように、転職や副業、独立などの選択肢や、民間案件を多く受注するなど、さまざまな点に取り組むことが大事です。

中小企業診断士の年収を把握しよう

中小企業診断士の年収は780万円程度です。弁護士や司法書士には劣りますが、社会保険労務士などとは同水準の年収です。

中小企業診断士として年収をアップさせるには、さまざまな方法があるので、本記事で紹介した方法に取り組んでみてください。

また、資格取得後のキャリアアップを考えることも大事です。さまざまな資格と比較して自分の能力を発揮できるかも考えてみましょう。